大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和44年(あ)314号 決定 1969年5月31日

主文

本件上告は、昭和四四年五月一日取下により終了したものである。

理由

被告人は、その詐欺被告事件について、昭和四三年一二月二五日東京高等裁判所がした判決に対して、同四四年一月八日上告を申立て、次いで同年五月一日上告を取下げたものであるが、別紙上告取下撤回申立書記載の理由により、上告取下の撤回をするというのである。

そのいうところは、示談や債務調停等の話合いが一部の被害者との間でしかできないと思って上告を取下げたところ、他の被害者との間でも話合いができそうなので、上告審議を続けてほしいというのである。

しかし、仮に所論のような錯誤があったとしても、その錯誤が被告人の責に帰することのできない事由に基づくものとは認められないから、右取下を無効ということはできない。また、本件上告は、右取下によってすでに終了しているのであるから、もはや取下の撤回は認められない。

以上の次第で、被告人が昭和四四年五月一日にした上告取下は有効であり、本件上告は、右取下により終了したものであるが、被告人が上告取下の撤回をするというので、決定をもってその趣旨を明らかにしたわけである。

(裁判長裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例